「速記を始めてみたいけど、基本文字って何から覚えればいいの?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。速記の基本文字は、いわば速記版の「ひらがな」です。この記事では、速記の基本文字の定義・種類・一覧から、初心者が挫折しない覚え方・1週間の練習スケジュールまでをわかりやすく解説します。早稲田式・中根式どちらの流派を選ぶべきかも詳しく説明しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
速記の基本文字は五十音に対応する約50種類の符号

速記の基本文字とは、日本語の五十音それぞれに対応した、シンプルな線・点・曲線で構成された速記専用の符号のことです。
公益社団法人 日本速記協会によると、「速記とは、簡単な線や点でできた符号などを使って、人が話す言葉をすぐさま書き取る技術」であり、速記符号は五十音に準拠して考案されています。
基本文字は速記学習の出発点であり、これを習得することで初めて速記で文章を書く土台が整います。
基本文字の定義|速記における「アルファベット」の役割
速記の基本文字は、英語学習における「アルファベット」と同じ位置づけです。
英語でA〜Zのアルファベットを覚えることがすべての文章表現の基礎になるように、速記では基本文字を覚えることがすべての速記表現の出発点になります。
日本速記協会の初心者向けガイドでは、「速記符号には、どの方式にも『基本符号』と『省略符号』の二つが用意されており、基本符号とは日本語の『ひらがな』に当たるもの」と説明されています。
つまり、基本文字は普通の文字(ひらがな・カタカナ)を速書き用に極限まで簡略化した「速記版ひらがな」です。
通常のひらがなが複数の画で構成されているのに対し、速記の基本文字は1〜2画程度のシンプルな形で表現されており、書くスピードを飛躍的に向上させる設計になっています。
基本文字は何種類?早稲田式は約50種類・中根式は約48種類
速記の基本文字の数は、流派(方式)によって若干異なります。
日本で最も普及している2大流派の基本文字数は以下のとおりです。
- 早稲田式速記:基本文字は約50種類(あ行〜わ行の五十音+濁音・半濁音対応)
- 中根式速記:基本文字は約48種類(五十音を基本に独自の符号体系)
どちらの方式も、日本語の五十音体系をベースにしているため、基本文字数は約50種類前後で共通しています。
なお、速記基本文字総覧によれば、明治時代から現代にかけて田鎖式・中根式・早稲田式など多数の方式が考案されてきた歴史があります。
現在では早稲田式と中根式が主流であり、速記技能検定試験(日本速記協会主催)は速記方式を問わず実施されています。
【図解】速記の基本文字一覧表|五十音対応で確認

速記の基本文字を実際に確認するには、五十音対応の一覧表を見ながら形を把握するのが最も効率的です。
以下では早稲田式・中根式それぞれの基本文字の特徴をあ行からわ行まで行別に説明します。
早稲田式の基本文字一覧(あ行〜わ行)
早稲田式速記の基本文字は、直線・斜線・曲線・点を組み合わせたシンプルな符号で構成されています。
速記文字の解説(note)によると、早稲田式速記の速記文字には「基本文字」「二音文字」「簡字」と呼ばれる3種類があり、基本文字がその基盤となっています。
早稲田式の基本文字の行別特徴は以下のとおりです。
| 行 | 代表的な符号の特徴 |
|---|---|
| あ行 | 小さな円・半円・短い横線などで表現 |
| か行 | 斜め下向きの直線が基本 |
| さ行 | 緩やかなS字型曲線 |
| た行 | 角度のついた折れ線・縦線 |
| な行 | 左曲がりの弧線 |
| は行 | 横向きの短い直線 |
| ま行 | 小さな円と直線の組み合わせ |
| や行 | 右上がりの斜線 |
| ら行 | 右下がりの波線 |
| わ行 | 縦向きの短い直線 |
早稲田式の基本文字を動画で確認したい方は、以下の練習動画が参考になります。
また、実際に早稲田式の基本文字だけで文章を書いた手元動画も学習の参考になります。
中根式の基本文字一覧(あ行〜わ行)
中根式速記の基本文字は、早稲田式と同様に五十音に準拠していますが、符号の形・角度・大きさに独自の特徴があります。
中根式速記の基本の書き方では、ア行・カ行・サ行・タ行など行ごとに基本文字の書き方が丁寧に解説されています。
中根式の基本文字の行別特徴は以下のとおりです。
| 行 | 代表的な符号の特徴 |
|---|---|
| ア行 | 点・短い縦線・横線で構成 |
| カ行 | 右下がりの斜線が基本 |
| サ行 | なだらかな曲線 |
| タ行 | 下向き直線・折れ線 |
| ナ行 | 左方向の弧 |
| ハ行 | 右向きの短い横線 |
| マ行 | 小さな丸と線の組み合わせ |
| ヤ行 | 上向きの斜線 |
| ラ行 | 下方向のなみ線 |
| ワ行 | 短い縦線 |
中根式の基本文字の書き方を動画で確認したい方は、こちらの動画が参考になります。
早稲田式と中根式の違い|初心者はどちらを選ぶべき?
早稲田式と中根式は、どちらも日本語の五十音に基づいた速記方式ですが、符号の形・書き順・学習環境などに違いがあります。
| 比較項目 | 早稲田式 | 中根式 |
|---|---|---|
| 基本文字数 | 約50種類 | 約48種類 |
| 符号の特徴 | 丸みのある曲線が多い | 直線的な符号が多い |
| 普及度 | 国内最大規模 | 次いで普及 |
| 検定試験 | 日本速記協会で対応 | 日本速記協会で対応 |
| 学習教材 | 豊富(書籍・動画多数) | やや少ない |
初心者には早稲田式がおすすめです。
理由は3つあります。第1に学習教材が豊富で書籍・動画・練習シートなどが充実していること、第2に早稲田式対応の速記教室が全国に多く、仲間と学べる環境が整っていること、第3に日本速記協会の検定試験でも早稲田式を学ぶ受験者が多くノウハウが蓄積されていることです。
ただし、周囲に中根式を使う人が多い環境(職場・学校の速記部など)であれば、中根式を選ぶほうがスムーズに学習できます。
速記の基本文字はなぜこの形?特徴と成り立ち

速記の基本文字は、一見するとランダムな記号のように見えますが、実は「できるだけ速く・正確に書ける」という明確な設計思想に基づいて考案されています。
その形の成り立ちと特徴を理解することで、暗記の効率も大幅に向上します。
直線・曲線・点のシンプルな組み合わせでできている
速記の基本文字は、直線・曲線・点という3種類の基本要素の組み合わせで構成されています。
日本速記協会によれば、「速記符号は、五十音に準拠して考案されているが、かなり簡略化されており」、シンプルな線と点の組み合わせで五十音を表現しています。
例えば、「ア行」の基本文字は小さな点や短い線で表現され、「カ行」は斜め方向の直線を基本としています。
この設計により、通常のひらがなを書く場合と比べて書くスピードが大幅に上がります。たとえば「あ」を通常のひらがなで書くと3〜4画必要ですが、速記の基本文字では1画で表現できます。

画数が少なく筆を離さずに書ける設計
速記の基本文字が「速く書ける」最大の理由は、画数が極端に少なく、連続して書ける設計になっていることです。
基本文字/単語の練習解説によると、「特にウやタ行など下方向の速記文字は短くなりがちなので、意識して長めに書くように努める」とされており、長短・角度・曲直によって文字を書き分ける設計になっています。
また、速記教本(日本速記協会PDF)では、「符字として採用できる線の長短・線の角度・線の曲直というのは比較的書き分けられやすく」、連続筆記に適した形になっていると説明されています。
つまり、速記の基本文字は「ペンを紙から離す回数を最小限にする」という原則で設計されており、これが1分間に100字以上を書き取れる速記の高速性の根拠となっています。
基本文字・略字・省略符号の3層構造を理解する
速記の符号体系は、基本文字だけで成り立っているわけではありません。
速記文字の解説(note)によると、早稲田式速記の文字には以下の3層構造があります。
- 基本文字:五十音に1対1で対応する約50種類の基礎符号(速記の「ひらがな」)
- 二音文字(略字):よく使われる2音の組み合わせを1つの符号にまとめたもの(例:「です」「ます」など)
- 省略符号(簡字):さらに高度な省略形。頻出単語・助詞・助動詞などを極限まで短縮した符号
日本速記協会の初心者ガイドでも、STEP4で基本符号を学んだ後、さらに省略符号を習得するステップが設けられています。
初心者はまず「基本文字」の習得を最優先に目指し、その後に略字・省略符号へステップアップするのが正しい学習順序です。
速記の基本文字の覚え方|初心者が挫折しない3つのコツ

約50種類の基本文字を一度に覚えようとすると、多くの初心者が挫折してしまいます。
ここでは、無理なく・効率よく基本文字を習得するための3つのコツを紹介します。
使用頻度の高い「あ行・か行・さ行」から優先して覚える
50種類すべてを均等に覚えようとするのは非効率です。まず使用頻度が高い行から優先的に習得することで、短期間で実用的な速記ができるようになります。
日本語の文章で特に登場頻度が高い音は「あ行・か行・さ行・た行」です。
例えば「ありがとうございます」「かんがえる」「さいきん」など日常的によく使う単語はこれらの行を中心に構成されているため、最初にこの4行をマスターするだけで多くの単語が書けるようになります。
速記の書き方サイトでも「まずは基本文字を覚えましょう!」として、あ行から段階的に学ぶ構成になっており、初心者が無理なく進められるように設計されています。
優先度の目安:あ行・か行・さ行・た行(第1優先)→ な行・は行・ま行(第2優先)→ や行・ら行・わ行(第3優先)
形の似ている文字をグループ化して効率よく暗記する
速記の基本文字には、形が似ているものが複数あります。混同を防ぎつつ効率よく覚えるためには、形の類似性でグループ化して学ぶことが有効です。
例えば、早稲田式では「直線系(縦・横・斜め)」「曲線系(弧・S字)」「点系」という3グループに分類すると、違いが視覚的に整理しやすくなります。
具体的なグループ化の例を示します。
- 直線グループ:か行・た行など(縦・斜めの直線が基本)
- 曲線グループ:さ行・ら行など(弧やS字型の曲線)
- 小形グループ:あ行・な行など(小さな円や短い弧)
「形が似ているから混乱する」のではなく、「似ているものを意識的にセットで覚える」という発想の転換が、暗記効率を2倍以上に高めるポイントです。
毎日10分の「なぞり書き」で記憶を定着させる
基本文字の暗記には、毎日10分の「なぞり書き」が最も効果的な練習方法です。
なぞり書きとは、見本の基本文字の上をなぞるように書き写す練習方法です。手の動きと文字の形を同時に脳に記憶させられるため、見るだけ・読むだけの勉強より格段に定着率が上がります。
具体的な手順は以下のとおりです。
- その日に学習する行(例:か行5文字)の見本を用意する
- 見本を見ながら、各文字を10回ずつなぞり書きする(所要時間:約5分)
- 見本を見ずに、同じ文字を5回ずつ書いてみる(所要時間:約3分)
- 翌日の最初に前日の文字を復習してから新しい文字に進む(所要時間:約2分)
この「10分なぞり書き」を毎日続けることで、7〜10日程度で全行の基本文字が定着する学習者が多いです。
基本文字の練習方法|1週間マスタースケジュール

「何から始めてどう進めればいいかわからない」という初心者のために、基本文字を1週間でマスターするための具体的なスケジュールを紹介します。
1日の練習時間は10〜15分を目安にしてください。無理のないペースで継続することが最重要です。
1〜2日目|あ行・か行の基本文字を書いてみる
1〜2日目は「あ行(5文字)+か行(5文字)」の計10文字を習得することを目標にします。
1日目の手順を説明します。
- あ行(ア・イ・ウ・エ・オ)の基本文字の見本を用意し、形を観察する(2分)
- 各文字を10回ずつなぞり書きする(5分)
- 見本を見ずに書いてみて、形を確認する(3分)
2日目の手順を説明します。
- 前日のあ行を復習(3分)
- か行(カ・キ・ク・ケ・コ)を同様になぞり書き(7分)
- あ行+か行を交互に書いて覚えているか確認(5分)
早稲田式のあ行・か行の基本文字は、以下の動画で実際の書き方を確認できます。
3〜4日目|さ行・た行・な行を追加する
3〜4日目は「さ行・た行・な行」の15文字を追加します。
この段階で合計25文字(あ行〜な行)を習得することになります。
3日目の手順を説明します。
- 1〜2日目のあ行・か行を5分で復習する
- さ行(サ・シ・ス・セ・ソ)をなぞり書きする(7分)
- あ行〜さ行を連続して書いてみる(3分)
4日目の手順を説明します。
- さ行の復習(3分)
- た行・な行を同様になぞり書き(7分)
- あ行〜な行を通して書いてみる(5分)
なお、基本文字・単語の練習サイトでは、「ウやタ行など下方向の速記文字は短くなりがちなので、意識して長めに書くように努める」というアドバイスがあり、た行の練習では特に注意が必要です。
5〜7日目|全行を通して復習&単語練習に挑戦
5〜7日目は残りのは行・ま行・や行・ら行・わ行を学びつつ、全行の復習と単語練習に移行します。
5日目の手順を説明します。
- は行・ま行を習得する(10分)
- これまでの全文字を連続して書く復習(5分)
6日目の手順を説明します。
- や行・ら行・わ行を習得する(10分)
- 全行の基本文字を書いてみる(5分)
7日目の手順を説明します。
- 全行の基本文字を見本なしで書いてみる(5分)
- 「ありがとう」「こんにちは」などの簡単な単語を速記で書いてみる(10分)
単語練習の練習音声は、以下のYouTubeプレイリストが無料で利用できます。
速記の基本文字学習におすすめの教材・リソース

基本文字の習得には、適切な教材を選ぶことが学習効率を大きく左右します。
ここでは初心者が最初に手にすべきテキストと、無料で使えるリソースを紹介します。
初心者向けテキスト3選|最初の1冊はこれ
速記の基本文字を学ぶための入門テキストは、流派に合ったものを選ぶことが大切です。
① 【公式】早稲田式速記法テキスト(早稲田速記株式会社発行)
早稲田式速記の基礎から基本文字まで体系的に学べる定番の入門書です。基本文字の一覧表・練習問題・書き方のポイントが1冊にまとまっており、独学にも適しています。
② 中根式速記学習テキスト(中根式速記協会発行)
中根式を選ぶ方向けの入門書です。基本文字の形・書き順・練習課題が段階的に収録されています。
③ 速記教本(日本速記協会)
日本速記協会が公開している速記教本(PDF)は無料でダウンロードでき、基本文字の説明から練習方法まで公式情報を確認できます。
無料で使える練習リソース|協会サイト・動画・練習シート
書籍を購入しなくても、無料で基本文字を学べるリソースが複数あります。
① 日本速記協会公式サイト
日本速記協会の初心者向けページでは、速記の始め方・学習ステップ・教室・共練会情報が無料で公開されています。
② 速記の書き方サイト(無料)
速記の書き方サイトでは、基本文字の一覧・濁音の書き分け方・連続して書く練習が無料で利用できます。
③ YouTube練習動画
YouTubeには早稲田式・中根式の基本文字練習動画が多数公開されています。手元撮影で書き方を確認できるので、独学に非常に役立ちます。
④ 中根式速記協会公式サイト
中根式速記の書き方ページでは、ア行からタ行までの基本文字の書き方解説と練習コーナーが無料で公開されています。
速記の基本文字に関するよくある質問

初心者が速記の基本文字を学ぶ際によく抱く疑問をQ&A形式で解説します。
基本文字を覚えるのにどのくらい時間がかかる?
Q. 基本文字を覚えるのにどのくらい時間がかかりますか?
A: 毎日10〜15分の練習を続けた場合、1〜2週間で全行の基本文字(約50種類)をひと通り覚えられる学習者が多いです。ただし「覚えた」状態と「スムーズに書ける」状態は異なります。形を暗記するだけなら1〜2週間、実際の速記に使えるレベルになるには1〜2ヶ月程度の反復練習が必要です。焦らず毎日少しずつ続けることが最短ルートです。
基本文字だけで文章は書ける?
Q. 基本文字だけで文章は書けますか?
A: はい、基本文字だけでも文章を書くことは可能です。ただし速度は遅くなります。実際に早稲田式の基本文字のみで1分間80字を書いた動画も公開されており、基本文字だけでも実用的な速度を実現できることが確認できます。速記の真価は略字・省略符号を加えることで発揮されますが、基本文字の習得が最初のゴールです。
独学でも基本文字はマスターできる?
Q. 速記教室に通わずに独学で基本文字をマスターできますか?
A: 十分可能です。現在は日本速記協会の公式サイト・無料PDF教本・YouTube動画など充実したリソースが無料で利用できます。基本文字の習得段階は教室に通わなくても達成できます。ただし、速記を実用レベルで使いたい場合や検定試験を目指す場合は、教室や共練会に参加して先輩速記者からフィードバックをもらうことで上達が加速します。
速記検定を受けるには基本文字の完全暗記が必要?
Q. 速記検定を受けるために基本文字は完全に暗記しなければなりませんか?
A: 速記検定(日本速記協会主催)を受験するには、基本文字の完全暗記は大前提となります。検定では実際に速記で文章を書き取る試験が課されるため、基本文字を迷わず書ける状態でなければ試験に対応できません。初級・3級などの下位級でも基本文字の完全習得が必要です。目安として、検定受験前に基本文字を3秒以内で書けるレベルまで定着させることが推奨されます。
まとめ|基本文字の習得が速記マスターへの第一歩

この記事では、速記の基本文字について以下の内容を解説しました。
- 速記の基本文字とは:五十音に対応した約50種類のシンプルな符号で、速記版「ひらがな」にあたる
- 主要2流派:早稲田式(約50種類)と中根式(約50種類)があり、初心者には教材・環境が充実した早稲田式がおすすめ
- 基本文字の成り立ち:直線・曲線・点の3要素で構成され、画数が少なく連続筆記できる設計
- 効率的な覚え方:使用頻度の高いあ行・か行・さ行から優先し、形でグループ化、毎日10分のなぞり書きで定着させる
- 1週間スケジュール:1〜2日目はあ行・か行、3〜4日目にさ行〜な行、5〜7日目で全行復習+単語練習
速記の基本文字は、約50種類という決して多くない数です。毎日10分の練習を1〜2週間続ければ、初心者でも必ずひと通りマスターできます。
まずは日本速記協会の初心者向けページと無料練習サイトを活用して、今日からあ行の基本文字を書いてみましょう。
基本文字の習得は、速記マスターへの確かな第一歩です。


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